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2020/03/23
EBPM(証拠に基づく政策⽴案)は⽇本で確⽴するのか:欧⽶の経験も踏まえて

高橋義明主任研究員による研究レポート「EBPM(証拠に基づく政策⽴案)は⽇本で確⽴するのか:欧⽶の経験も踏まえて」を掲載しました。

本文(pdf)はこちらからダウンロードできます。

(要旨)

 ⽇本におけるEBPM(証拠に基づく政策⽴案)は官⺠データ活⽤推進基本法(2016 年)の制定、⾻太の⽅針2017 の閣議決定を受けて始動した。本稿では⽇本版EBPM の状況を概観した上で各国の状況と⽐較し、その課題について整理したい。


 ⽇本版EBPM の特徴は、主⽬的を予算の縮減、主な担い⼿を霞が関としていることである(研究機関との共同研究、研究者との協働は想定している)。しかし、⽇本よりも前に発展した欧⽶のEBPM では、研究者が政策⽴案に資する証拠(Evidence)を提供し、政策当局者がそれを利⽤することが基本である。政策当局者は政策課題を明確化し、疑問を発し、必要なEvidence を求める⼀⽅、研究者は新たなEvidence の提供に向けて研究を実施し、そうした既存・新規Evidence を政策当局者が解釈・適⽤し、実施後はモニタリングと事後評価を⾏うという相互関係を想定している。さらにその前提として政策当局者がデータ提供を促進している。そのため、政策当局者に求められる能⼒の⼀つは複雑な政策的Evidenceの賢明な利⽤者として経済学、統計学などの科学的基礎知識が不可⽋とされる。また、政策当局者に都合のよいつまみ⾷い的なEvidence の利⽤も戒められている。英国ではその促進のために政府主席科学顧問および科学庁が存在する。

 研究⽬的での⾏政データの提供について、⽇本では統計分野における取り組みとして統計法による匿名データ、個票データの提供範囲の拡⼤などが進められている。しかし、提供における書類の記載事項は詳細であり、申請からデータ⼊⼿まで時間を要する。例外的な⾏政データの⼊⼿⽅法として、個⼈情報保護法改正による⾮匿名加⼯情報や情報公開制度の利⽤は学術研究を⽬的としていない。⼀⽅、海外ではデータ・アーカイブで研究者は容易に⾏政データを⼊⼿できる。さらに英国のONS Longitudinal Study など複数の調査や⾏政記録情報を統合した⾏政ビックデータを作成し、研究者に提供している。⽇本の統計システムが分散型であることも相まって、こうした取組みはなく、学術利⽤可能なデータの横断的な政策的Evidence に⼤きな制約を受けている。さらに統計法の対象領域が狭く、かつ提供の可否は所管省庁の意向次第である。都道府県・市町村の実施したアンケート調査などの⾏政情報の研究⽬的の提供については議論さえ進んでいない。


 良質な調査設計は良いデータ、良い担い⼿を作り、それが更に良いデータを⽣み出していく好循環は現状では⽇本では⽣まれず、他の先進国に⼤きく遅れている。データ・アーカイブへの政府・⾃治体調査の寄託、研究者とデータ保有する⾏政機関の間を仲介するワンストップ化、複数の統計調査や⾏政記録情報を統合した⾏政ビックデータの作成といった取組が必要である。研究に資する統計制度改⾰には強い政治的リーダーシップが不可⽋である。

キーワード: EBPM, 統計法, ⾏政記録情報, データ・アーカイブ, ビックデータ

(以上)

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