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外交・安全保障

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2022/01/18
西野純也上席研究員(慶応義塾大学法学部教授)によるコメンタリー「2022年朝鮮半島情勢の展望」を掲載しました。

 2022年開始早々から朝鮮半島情勢が慌ただしい。北朝鮮は、15日、11日にミサイル試射を行い、それらが「極超音速ミサイル」であると発表した。12日付『労働新聞』は、金正恩総書記が11日の試射を参観したことを写真とともに伝えた。北朝鮮は、14日、17日にもそれぞれ2発ずつミサイルを発射し、日本をはじめとする国際社会に軍事的脅威を与えている。

 金総書記は、「朝鮮労働党第8回大会が提示した国防力発展5カ年計画の中核5大課業のうち、最も重要な戦略的意義を持つ極超音速兵器開発部門で大成功を収めたミサイル研究部門の科学者、技術者、活動家と当該の党組織の実践的成果を高く評価」したという。そして、「国の戦略的な軍事力を質量共に、持続的に強化し、わが軍隊の現代性を向上させるための闘いにいっそう拍車をかけなければならない」と述べた。


 国防発展5ヵ年計画とは、2021年9月のミサイル試射時に「国防科学発展及び兵器システム開発5カ年計画」として言及され、その存在が明らかになったものである。2021年1月の第8回党大会時に提示されたため、今年から5カ年計画は2年目に入っており、金総書記からすれば新年の試射「大成功」で幸先良いスタートを切ったことになる。

 この5ヵ年計画の「中核5大課業」とは、(1)超大型核弾頭の生産、(2)1万5000キロ射程圏内の任意の戦略的対象を正確に打撃、掃滅する核先制および報復打撃能力の高度化、(3)極超音速滑空飛行戦闘部の開発導入、(4)水中及び地上固体エンジン大陸間弾道ロケットの開発、(5)核潜水艦と水中発射核戦略武器の保有、であることが明らかになっている。11日の試射は興味深いことに、「極超音速武器体系の全般的な技術特性を最終的に確証する目的」で行われたと北朝鮮は発表した。だとすると、5大課業のうち(3)はひとまず達成されたことになるが、それは同時に、今後は残りの4つに力を入れていくことを意味している。北朝鮮は2018年6月の米朝首脳会談を契機に、核実験と長距離大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を実施しない状況(モラトリアム)を続けてきた。しかし、国防発展5ヵ年計画の存在は、そのモラトリアムが破られる可能性を示唆している。

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