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2001/10/25
ベルンハルト・フォーゲル ドイツチューリンゲン州首相 講演会 「EUの将来」

於:ホテルニューオータニ

(1)EU拡大の意義
9月11日の米国における同時多発テロは、単に対米国ということのみならず文明社会全体に対する挑戦であり、世界はテロリズムに対して一致団結して立ち向かっていく必要があろう。こうした中で、ヨーロッパでは、政治的安定のために欧州統合を深化させ、同時に拡大させていくことの重要性がますます高まっている。
経済的には、EUが、現在の加盟国15カ国に交渉中の12カ国を加えて、27カ国に拡大した暁には、人口は現在より1億人程度増えて約5億人となり、GDPも現状の約3分の1相当が増加する。加盟が予定される中東欧諸国の潜在成長力は大きく、EU拡大の経済効果にも大きな期待が寄せられている。

(2)EU拡大の現状と今後のシナリオ
EUでは、1998年以来新規加盟交渉が行われている。しかしながら、アイルランドに於いてニース条約の批准が国民投票で否認されるなど受け入れ側に足並みの乱れが見られるほか、候補国側の加盟準備の進捗にもばらつきがあり、必ずしも全てが順調とは言えない。  こうした中で、以下の3つが、今後のシナリオとして考えられるであろう。
1. ビッグバンシナリオ
12カ国の多くを数年以内に一度に加盟させるシナリオで、最も現実的であるが、西側に一度に多くの労働力や農産物が流入するリスクも指摘されている。
2. 小さな枠内での早期加盟実現シナリオ
準備の整った数カ国だけを先行加盟させるもので、受け入れ側の負担は比較的小さいが、加盟が認められなかった国で政治的な問題が発生する可能性が大きい。
3. 加盟時期の遅延シナリオ
加盟が先送りされるシナリオで、政治的な不安定を招く恐れがある。絶対に避けられるべきであり、EU拡大に強い使命感を抱くドイツとしては早期加盟のための橋渡し役を果たしていく決意である。

(3)拡大EUのあるべき姿
加盟国が27カ国に増加した場合、新たな意志決定システムとして、欧州議会等の強化が必要となろう。ただ、個人的には中央集権国家や欧州合衆国のような形は目指すべきではないと考える。強いて 言えば国家同盟のようなものが望ましいのではないか。意志決定機構は住民にとって身近で透明な方が好ましく、各国レベル、地域レベルで行うことが効率的であるものについては権限を委譲するべきであろう。
グローバリゼーションが進展する中で、欧州は結束することによって将来に大きな可能性を開く道を選んだ。が、言うまでもなく、この結束は他者を排除するものでは決してあってはならない。日本や米国とはパートナーとして新しい将来へ向かって行くであろうし、中国等とも協調を強めていくことになろう。 (大沼)

※この講演会は日本財団の助成事業により行っております。

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