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2018/12/27
「知りたいことを聞く」シリーズ No.3 「最近の北東アジア情勢」(金杉憲治外務省アジア大洋州局長)

 中曽根平和研究所では、「知りたいことを聞く」シリーズ第三弾として、「最近の北東アジア情勢」と題して、金杉憲治外務省アジア大洋州局長と会員との意見交換を、下記の通りにて開催しました。議論の概要は下記3のとおりですが、オフレコを前提としていますので、これ以上の詳細は割愛いたします。

 この会合は従来型の講演会ではなく、はじめ藤崎理事長がいくつか質問した後、会員出席者から質問する形をとっています。明年も継続して開催する予定です。

1 日時:平成30年12月21日(金) 14:00-15:30

2 場所:中曽根平和研究所 大会議室

3 概要

(1)北朝鮮

 米朝首脳会談から半年が経った現時点の印象としては、核兵器やミサイルを廃棄したわけでもなく、米韓合同軍事演習が一時停止されて軍事的圧力が低下したことや中国及びロシアとの良好な関係を考えれば、北朝鮮にとって良い状況になってしまっている。早ければ年明けとも言われる第2回首脳会談では、非核化のロードマップ等の具体的成果が期待されるが、米朝の実務者間の協議は進展していないようである。

 日本が心配するのは、米国の経済制裁緩和もあるが、米が圧力を強めて北朝鮮が挑発モードに回帰することもある。特に来年は重要な国内及び外交日程もあり、地域の緊張が高まることは好ましくない。

 北朝鮮の非核化へのコミット等、どのような方向に進もうとしているのかは、明年1月1日の金正恩委員長の「新年の辞」で判断することになろう。

 北朝鮮の脅威については、掘り下げていくと日米韓の認識は異なるかもしれないが、現時点での対応としてはCVIDの実現で一致している。

 南北統一に関しては、近年では若い世代を中心に統一への支持が減少しており、将来的にはますます難しくなるかもしれない。

(2)韓国

 「徴用工」への賠償の問題は、保守と革新の相克に揺れる韓国内で一定の方向性が出るまでは、日本政府としても推移を見守るしかない。日本世論の厳しい声もあるが、北朝鮮問題での連携を考えれば韓国との関係を断ち切るわけには行かない。ただし日本企業が財産差し押さえなどの実害を受ける場合は、国際司法の場に訴えるなど政府が前面に出る必要がある。

 大法院判決は、今後の分水嶺になるものであり、歴史的経緯も踏まえて、韓国内できちんと解決すべき問題である。長官を地裁から大抜擢したのは文政権であり、どのような判決が下されるかは容易に予測できたはずである。

 政府間では衝突する局面もやむを得ないが、人的、文化、自治体交流は止めないことが重要である。政府間関係を好転させるチャンスは失うべきではない。

(3)中国

 米中間では、貿易不均衡、構造問題、覇権争いといった摩擦が生じている一方で、日中関係は改善の方向にある。米国の反トランプ派は、忠実な同盟国であった日本でさえ中国に接近している批判するが、日本としては、長らく首脳の往来もなかった関係を正常に戻そうとしているだけだと米側に説明している。

 日中による対第三国協力においては、一帯一路であれ、自由で開かれたインド太平洋であれ、安倍総理が繰り返し表明しているいわゆる4条件は不可欠である。

 ファーウェイをめぐる問題については、米中間の覇権争いの根幹にデジタル分野があると考えている。多くの国々にとって、米中どちらかの選択を迫られる時代が来るかもしれず、中国に似た体制の国々やテロ対策が喫緊の課題となっているような国々は中国を選ぶ可能性があろう。

以上

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