2025/10/28
10月15日にNPI公開ウェビナー「「西ユーラシア東部」の歴史という観点から見たイスラエル」を開催しました。
中曽根平和研究所は、10月15日に、鶴見太郎氏(東京大学大学院准教授)をお招きし、NPI公開ウェビナー「「西ユーラシア東部」の歴史という観点から見たイスラエル」を開催しました。
本ウェビナーでは、中曽根平和研究所の研究プロジェクト「東アジア国際問題の内在的考察:地域研究から見る朝鮮半島・台湾海峡問題」のロシア研究会リーダーの廣瀬陽子が司会として参加し、活発な議論が交わされました。
〔登壇者〕
鶴見 太郎 氏(東京大学大学院総合文化研究科 准教授)
〔司会〕
廣瀬 陽子 当研究所上席研究員(慶應義塾大学総合政策学部 教授)
議論された主な論点は以下のとおりです。
- 西ユーラシア東部という地理概念を通じて、イスラエルの歴史的背景を理解することが重要。民族と国家の関係性が、この地域では複雑に絡み合っている。シオニズムの起源は、ロシア帝国内のユダヤ人知識人による民族意識の覚醒であり、単なる逃避ではなく、尊厳と自尊心の回復を目指す運動だった。
- 第一次世界大戦前後の人口移動と強制移住の歴史が、イスラエル建国の背景にあり、民族間の軋轢と交渉の複雑さを示している。イスラエルは「エスニックデモクラシー」と呼ばれ、ユダヤ人中心主義的な国家運営が特徴的で、他の民族との関係が非対称的である。
- ソ連崩壊後のユダヤ人移民は、イスラエルの政治的右傾化に大きく貢献し、パレスチナ問題に対するより強硬な姿勢を生み出した。ユダヤ人の民族概念は、国家を超えて存在し、世界中のユダヤ人をつなぐトランスナショナルな性質を持っており、ポグロムや迫害の歴史が、ユダヤ人のアイデンティティ形成と民族意識の強化に大きな影響を与えた。
- イスラエルの外交戦略は、民族的利害と実利的な国際関係のバランスの上に成り立っているほか、現代イスラエルの政治的・社会的構造は、ロシア帝国時代の民族政策の影響を強く受けている。

