English

イベント

  • 中曽根平和研究所ホーム
  • イベント
  • 2月22日にNPI公開シンポジウム「ウクライナ侵略5年目の現在地 ― ロシアの戦争は旧ソ連諸国をどこへ向かわせるのか」を開催しました。

2026/03/12
2月22日にNPI公開シンポジウム「ウクライナ侵略5年目の現在地 ― ロシアの戦争は旧ソ連諸国をどこへ向かわせるのか」を開催しました。

 中曽根平和研究所は、ロシアによるウクライナ侵攻が5年目を迎えようとする2月22日に、シンポジウム「ウクライナ侵略5年目の現在地 ― ロシアの戦争は旧ソ連諸国をどこへ向かわせるのか」を対面およびオンラインのハイブリッド形式で開催しました。

 本シンポジウムの第一部では、2025年8月にラトビアで実施した現地調査の成果を報告するとともに、吉田謙介・ラトビア特命全権大使による基調講演を行いました。

 第二部では、ロシア研究会のメンバー6名によるラウンドテーブルを行い、多様な視点から、ウクライナ戦争がソ連諸国に与えている影響を検討し、各国の現在地と今後の展望、さらには和平の可能性について議論しました。


〔開会挨拶〕

 中曽根弘文 中曽根平和研究所 理事長


〔基調講演〕

 吉田 謙介  ラトビア特命全権大使


〔パネリスト〕

 廣瀬 陽子  慶應義塾大学総合政策学部教授(当研究所上席研究員)

 宇山 智彦  北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授(研究所客員研究員)

 長谷川雄之  防衛省防衛研究所主任研究官(当研究所協力研究員)

 中馬 瑞貴  一般社団法人ROTOBOロシアNIS経済研究所主任(当研究所協力研究員)

 真野 森作  毎日新聞社モスクワ支局長(当研究所協力研究員)

 ダヴィド・ゴギナシュヴィリ 慶應義塾大学SFC研究所上席所員(当研究所協力研究員)


〔司会〕

 大隅  洋  中曽根平和研究所 主任研究員


議論された主な論点は以下のとおりです。

中曽根理事長による開会挨拶:

  • 日本・ラトビア友好国会議員連盟の会長として、当研究所の研究員によるラトビア現地調査の成果を広く共有するため、本シンポジウムの開催を提案した。ソ連併合などの苦難の歴史を持ち、現在NATO最前線にあるラトビアは、日本にとって安全保障等において重要な友好国である。

第1部:ラトビア出張報告

吉田大使による基調講演:

  • ラトビアは西側とロシアの力が拮抗する地政学上の断層線に位置する。ロシア語話者は母語ベースでは2割弱であるが、家庭内使用などを含めると約4割に達するとされ、多様化し分断が進むなかで政治的支持も多様化している。ラトビア側は防衛予算の増額やNATO駐留部隊の強化により、想定される戦争シナリオに対する抑止力向上を図っている。

出張報告:

  • リガには「ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」などの亡命メディアが拠点を置いているが、支援の減少や寄付受け取りの制限により財政難に直面している。それでも各プラットフォームを活用し、ロシア本国の匿名ジャーナリストネットワークと連携しながら独自の報道を継続している。
  • ロシア語話者の政治勢力は分裂し、支持政党も多様化している。ロシアの脅威を背景にNATO・EUとの連帯やウクライナ支援を進めているが、ロシア語話者の多くは親プーチンではないものの、ラトビア社会への統合は順調とは言えず、一部地域では親露的傾向を持つ勢力が影響力を持つなどセンシティブな課題として残っている。
  • ラトビアは難民の武器化やドローン攻撃、情報戦などの多面的な攻撃にさらされており、情報空間を国防領域と明記している。対抗策として、対人地雷禁止条約(オタワ条約)からの離脱や「ドローンの壁」構想など、周辺国と連帯した包括的安全保障(トータルディフェンス)体制への移行を進めている。

第2部:ラウンドテーブル

  • ウクライナ侵攻により武力行使のハードルが低下し、安価なドローンの使い捨てなど新たな戦争形態への適応や防衛産業の強化が急務となっている。一方で、ロシアはテクノクラートを中心とする国家官僚制が機能しており、戦時経済を維持する強靭さを見せている。
  • ロシア社会には戦争疲れや不満が広がっているものの、抗議は無意味との受動的な意識から政権の強硬路線の継続を許容している。また、戦死者は大都市で少なく、高給を提示されたシベリアなどの貧困地域からの兵員動員に偏っており、明確な地域格差が生じている。
  • ロシアは経済制裁を回避するため、インドや中東など「南側」の国々との貿易を拡大させて対外経済関係を大きく転換している。インドへの原油輸出の増加に加え、国際南北輸送回廊(INSTC)のような新物流ルートの開拓により、独自のサプライチェーン再構築を図っている。
  • 民主主義の旗振り役だったジョージアが親露姿勢を強める一方、アルメニアは対露依存から脱却し欧米やインドとの外交多角化を進めている。アゼルバイジャンはエネルギー供給国として自立性を高めており、新たな物流ルートの構築による多様化も含め、地域で勢力圏の再編が進んでいる。
  • 中央アジア諸国は、ロシアとの経済的・安全保障的な関係を維持しつつも、過度な依存を避けるために中国など他国との関係強化を進めている。大国間競争の環境下で「中央アジア+1」フォーマットを活用し、自国の実利を追求する多角的で主体的な外交路線を推進している。
  • 現在の和平案は問題の先送りや紛争の凍結に過ぎず、占領地ではパスポート強制などロシア化が進むジレンマを抱えている。単なる停戦ではなく、再侵略を制度的に不可能にする法的拘束力と実働的な抑止体制の構築が不可欠であり、領土と人間の安全保障の両立が最大の課題である。
< 前のページに戻る

イベントの最新記事

記事一覧へ >
公益財団法人 中曽根康弘世界平和研究所(NPI)
Copyright ©Nakasone Peace Institute, All Rights Reserved.