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経済安全保障

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2023/03/31
経済安全保障研究会は2022年度研究報告を掲載しました。

 米中のハイテク摩擦を背景に経済安全保障に対する関心が高まる中、昨年5月11日に経済安全保障法が成立した。その内容については、①重要物資のサプライチェーン強靭化、②基幹インフラのサイバーセキュリティ、③先端的な重要技術の開発支援及び④特許出願の非公開化の4本柱となっており、昨年8月から同法の施行が始まっている。ここでの安全保障の概念は、「国家、国民生活の安全に対する脅威への対抗」について軍事力をベースとしたものから、重要物資(サプライチェーン)や基幹インフラのセキュリティといった経済的なイシューに拡張されていることに特徴がある。

 また、AI、バイオテクノロジー等のサイエンスや汎用技術が進展する中、経済安全保障の問題を考えるうえでハイテク技術とその活用(イノベーション)は重要な視点となっている。従って、法律の柱の一つとしてその開発支援が謳われているが、同法における「重要特定技術」は「その技術が不当に流出したり、外部に依存する場合、国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれをもたらすもの」と定義されている。技術の適切な成果の取り扱いのために、これらの先端技術の国際的移転については、現行の貿易管理規制に基づく取り扱いに加えて何らかの制限的な措置が取られる可能性がある。

 また、サイエンスと技術の距離が縮まる中、規制の対象は民間の研究開発成果のみならず、大学等の公的研究機関における研究活動にも及ぶようになっている。科学研究は国際的に自由な研究交流が行われることでより進むものであり、特に先端的な科学技術については世界的に見た研究フロンティアにアクセスできる意義は大きい。つまり、過度の規制は自国の科学技術力の発展を阻害することとなるので、自国競争力を強くするための「攻め」と技術流出によって経済安全保障が脅かされないための「守り」のバランスが重要である。

 本研究会においては、経済安全保障の観点から、この先端科学技術に関する「攻め」と「守り」をどうするかについて学際的なメンバーで検討し、制度設計や外交政策のあり方について検討を行ってきた。ここでは、各委員における様々な観点からの検討結果を踏まえて、総論として全体を通した基本的な考え方を述べ、その後各論として、大学、企業、政府のそれぞれに対する提言として、研究会で出された意見を整理した。また、最後に外交政策も含めた今後の対応について述べる。

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