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経済安全保障

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2025/06/24
NPI特別セミナー「不確実性のもとでの大国との向き合い方」を6月9日に開催しました。

開会の挨拶を行う麻生会長

講演を行うロバート・ウォード氏

パネル・ディスカッションの模様

閉会の挨拶を行う柳瀬副理事長

 中曽根平和研究所は6月9日、提携先である英国の国際問題戦略研究所(IISS)日本部長地経学・戦略担当ディレクターのロバート・ウォード氏をお迎えして、「不確実性のもとでの大国との向き合い方」をテーマとする特別セミナーを開催しました。


 開会の挨拶に登壇した麻生太郎会長は、本年1月20日に発足したトランプ政権について、トランプ大統領の様々な発言が注目されているが、同盟国に対する防衛費の増額要求や米国の製造業再建への協力要請は、トランプ政権の一過性のものではなく、米国社会が根底に抱えている構造的問題の現れであると指摘しました。また、これまで米国頼みだった「自由で開かれた国際秩序」を、今後は志を同じくする国々とともに支えていくべきだと述べました。


 ロバート・ウォード氏は、"The global reset-new paradigms for Japan and UK"と題して基調講演を行いました。2001年の中国のWTO加盟以降に急速に深化したグローバリゼーションのもと、米国の巨大な消費需要に支えられた中国の貿易黒字(米国の貿易赤字)が拡大するポスト冷戦の時代が到来したが、それはもはや持続可能でなく、効率性が重視されてきた時代から強靭性が求められる時代へ、またグローバルからリージョナルへの転換が進んでいる、つまりポスト冷戦の時代が終わりを迎え、次の段階へと移行していると分析しました。

 こうした状況のもと、CPTPP(経済)やAUKUS(安全保障)、ファイブアイズ(インテリジェンス)など、英国のインド太平洋地域での制度的取り組みに触れ、日英両国が戦略的に連携・補完しながら、ルールに基づく国際秩序を支えていく必要性を強調しました。

 米中のデカップリングがさらに強まる可能性があるなか、中国はグローバル・サウスとの関係構築を強化することが見込まれるが、日英両国は有力なミドルパワーとして、法の支配に基づく秩序維持に主体的な役割を果たすべきであると述べました。


 基調講演を受けて、川島真・当研究所研究本部長をモデレータとして、ウォード氏、畠山京子・新潟県立大学教授、細谷雄一・当研究所上席研究員によるパネル・ディスカッションが行われました。畠山教授は、安全保障および経済分野で米中の対立が激化して不確実性が高まる中、日本や英国などのグローバル・ミドルパワーの役割が重要であり、友好国をまとめて共同リーダーシップをとることが必要と述べました。細谷上席研究員は、日英両国の外交史を振り返りつつ、現在の日英関係は1900年代初頭の日英同盟時代よりも信頼と相互理解が深まっていると指摘。ロシアのウクライナ侵攻を受けてNATOファーストの考えが強まるもとでも、英国がインド太平洋の重要性を発信し続けることへの期待感を示しました。

 また、トランプ政権が関税措置や対中デカップリングを進める一方で、中国が貿易相手を先進国からグローバル・サウスに軸足を移しつつある現在の状況をふまえ、今後の国際経済秩序はどのような方向に向かっていくのか、その中で日英両国がどのような役割を果たすべきかについて活発な議論が交わされました。安全保障分野が伝統的な陸海空から情報空間・サイバー領域へと広がり、ディスインフォメーションやマルインフォメーションが蔓延する中で、国際秩序を支える価値や言説の重要性が改めて認識されました。


 閉会の挨拶に登壇した柳瀬唯夫副理事長は、日米通商交渉に携わった経験等を振り返りつつ、米国との関係が難しくなる局面では、英国を始めとする欧州や東南アジアとの関係を常に意識することの重要性を再認識したと述べました。


◆基調講演

 ・ロバート・ウォード 英国際問題戦略研究所(IISS)日本部長地経学・戦略担当ディレクター

◆パネル・ディスカッション モデレータ

 ・川島真 中曽根平和研究所研究本部長

◆パネリスト

 ・ロバート・ウォード氏

 ・畠山京子 新潟県立大学教授

 ・細谷雄一 中曽根平和研究所上席研究員

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