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2025/06/25
柿原主任研究員によるコメンタリー「日米鉄鋼業における低炭素化、脱炭素化の取組み -日本製鉄とU.S.スチールのシナジー効果とは-」を掲載しました。

 2023年12月、日本製鉄㈱(2024年粗鋼生産量世界4位。以下、日本製鉄)はU.S.スチール(2024年粗鋼生産量世界29位、米国内3位)の買収について発表した。日本製鉄はこの買収の戦略的意義として、収益力の向上を目指し「米国および世界の高級鋼に対する需要の高まりへの対応力を強化」することを挙げるとともに、両社はカーボンニュートラルの実現という共通の目標を掲げており、脱炭素化の革新技術の開発を協業し「脱炭素化と持続可能な社会の実現に向けて、世界の鉄鋼業界をリード」することを挙げている。

 その後2025年1月米国の前バイデン大統領は、本買収が米国の国家安全保障を害することとなるとし、取引禁止の行政命令を発した。これに対し、同月日本製鉄とU.S.スチールは、本買収に関する前バイデン大統領令およびCFIUS(対米外国投資委員会)の審査無効を求める訴訟を提起するとともに、米国鉄鋼メーカーのクリーブランド・クリフス(2024年粗鋼生産量世界23位、米国内2位)等に対し共謀して行った違法行為に対する訴訟も提起した。また、同月クリーブランド・クリフスが米国鉄鋼メーカーのニューコア(2024年粗鋼生産量世界16位、米国内1位)と連携し、U.S.スチールを買収する可能性があると報じられた。

 更に同年4月米国トランプ大統領は、1月に発せられた行政命令に追加的措置を講じることが適切か否かの判断材料とするため、日本製鉄のU.S.スチール買収計画についてCFIUSに審査を指示した。その後米国トランプ大統領はCFIUSの審査結果を踏まえ、日本製鉄とU.S.スチールのパートナーシップを承認することとなり、同年6月13日両社は米国政府と国家安全保障協定を締結した。この協定では日本製鉄が2028年までにU.S.スチールへ約110億ドルの投資を行うことに加え、買収後のU.S.スチールのガバナンスや米国内での生産、通商等に関するコミットメントも定められた。協定締結後、同年6月18日、日本製鉄はU.S.スチールの買収を行い、その後U.S.スチールが米国政府へ黄金株を発行する手続きを経て、両社のパートナーシップが成立する運びとなった。

 本稿ではまず日米鉄鋼業の低炭素化、脱炭素化(以下、低・脱炭素化)の取組み状況を整理、考察する。次いでこれを踏まえ日本製鉄、U.S.スチール両社がパートナーシップに基づきシナジー効果を見込む低・脱炭素化の革新技術の開発について考察する。

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