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2020/11/19
NPIメールマガジン(「赤い香港」への道?)

NPIメールマガジン(「赤い香港」への道?)

【特集記事】

「赤い香港」への道?
川島真(上席研究員)

 「国家の安全」の論理が、経済発展の論理を席巻し、香港に国家安全法制が拡大適用されることで、香港は大きな転換点を迎えた。長らく、国際社会、特に先進国と中国との結節点、また冷戦下では中国大陸と台湾との間の結節点だったことを考えれば大きな転換が訪れたということだろう。だが、これが香港の衰退に直ちに結びつくわけではないだろう。
 1997年の香港返還の基礎となった中英共同声明にしても、また香港基本法にしても、これらは中国とイギリスとの間の合意という面もあったが、いわば香港に投資してきた先進国を中心とする資本主義世界との合意でもあったと言える。そして、香港は返還後も、外国資本の中国投資の窓口、弁として機能してきた。香港経由の対中投資は増加したし、時には中国からの一時退避所としての機能を香港は担ってきた。これは、外国からの投資と外国への製品の輸出という輸出加工型の経済発展を志向する中国にとって、極めて必要とするところでもあった。金融センターとしての香港は中国経済発展の鍵であった。
 しかし、先進国からの直接投資と先進国への製品の輸出はもはや21世紀の中国経済の最重要視するところではない。無論、自由貿易体制も、外交からの対中投資も対先進国輸出も重要だ。だが、それよりも重要なこと、すなわち国家の安全があるだけでなく、経済の体質も次第に変わり、中国企業の対外投資という面での香港の重要性も増してきている。そのような状況の中で、香港はまさに先進国や西側の企業と中国との結節点ではなく、チャイナマネーや中国企業が外に出ていく、あるいは時に世界各地から一時退避する避難所担っていくのではなかろうか。そのためには、香港基本法の「読み替え」もまた必要だということになる。
 もちろん、このような見方は香港の人々からすれば迷惑だろう。そして先進国からしても受け入れがたい。香港に投資している企業も撤退を視野に入れた検討をしているのかもしれない。だが、中国政府はすでに舵を切ってしまったように見える。
 昨今、香港の混乱のさなか、香港に流入している資本は増え、株価は上昇している。この中には中国政府の指示の下に動かされている資金も多く含まれていることだろう。だが、このような資金の流れこそが、これからのチャイナマネーと中国企業のための香港、まさに「赤い香港」の姿を示しているものだとも言えるのではなかろうか。だが、香港がこれまでになってきた機能を中国共産党政権が深く統治に関与するかたちで維持、継承できるのかは依然未知数だ。近代法の秩序や社会に根ざした自由が香港の自由な経済を支えてきたということを考えれば、中国の試みもまた容易ではないことに気付くであろう。


【研究活動のご案内】

〇中曽根平和研究所が今年度立ち上げた、「デジタル技術と経済・金融」2020年第1回研究会を6月30日(火)にウェブ会議にて開催いたしました。テーマは、「デジタルプラットフォーマーと金融」、登壇者は、中国デジタルをご専門とされる岡野寿彦研究委員(NTTデータ経営研究所)、ならびに岩田祐一研究委員(中曽根平和研究所)です。詳細は以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.npi.or.jp/research/2020/07/13143531.html

〇高橋主任研究員(田辺・早稲田大学教授との共著)による研究レポート「社会調査の観点から考える厚生労働省の抗体保有調査の意味と問題点:今後の抗体調査の改善に向けて」を掲載しました。(2020/07/03)
https://www.npi.or.jp/research/2020/07/03181948.html


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